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インサート成形とインサート接合の違いとは?特徴と用途をわかりやすく解説!

金属部品と樹脂を一体化させる製造技術のひとつに「インサート成形」があります。多くの利点を持つインサート成形ですが、同時にいくつかの課題が存在します。それを解消するために開発されたのが「インサート接合」と呼ばれる工法です。

本記事では、インサート成形とインサート接合の特徴や違い、用途についてくわしく解説します。

 

インサート成形について

インサート成形とは

インサート成形とは、プラスチック成形の一種で、専用の金型内に金属部品を設置して樹脂を充填し、金属と樹脂を一体化させる工法です。接着剤やボルトなどを必要とせず、強度・耐久性に優れた部品が製造できます。

 

メリットと用途

インサート成形には、個々の部品ごとに独自の金型が必要です。そのため、用途に最も適した金型を設計することができ、複雑な形状や構造をもつ部品にも対応可能です。金型を用いることで、安定した品質の部品が量産可能となり、自動車や電子機器、医療機器など、多岐にわたる分野の部品に広く利用されています。

また、成形の際に接着剤やボルトを必要としないので、接合工程の短縮による生産性の向上、製品の軽量化、製造コストの削減にも貢献します。

 

デメリット

上記のように、多くのメリットを持つインサート成形ですが、以下のようなデメリットも存在します:

樹脂を射出成形して一体化させる工法のため、中空部品の製造には不向き

専用の金型を製作する必要があり、初期コストが高額

金属部品の形状を常に一定に揃える必要がある

最大の課題として、封止性・気密性が確保しづらい

特に気密性の問題については、熱膨張係数が異なる2つの素材を密着させるため、温度変化で生じる膨張と収縮の差によって接合界面に負荷がかかり、経時的に隙間が広がってしまうことがあります。

 

インサート接合について

インサート接合とは

インサート成形の課題をクリアするため開発された技術が「インサート接合」です。インサート成形と同様、射出成形により金属と樹脂を一体化させる接合方法ですが、金属部品の表面をレーザー処理等によって粗面化し、密着性を向上させました。

 

表面粗面化の主な手法

レーザーアブレーション処理:金属表面にマイクロスケールの微細な凹凸を形成

プラズマ処理:表面を活性化し、樹脂との密着性を向上

ショットブラスト処理:微細な粒子を高速で吹き付けて表面を粗くする

これらの処理により、凹部に溶融樹脂が隙間なく入り込み、インサート成形よりも強度の高い接合が実現します。

 

メリットと用途

インサート接合の主なメリット

金属と樹脂の密着性が大幅に向上

優れた気密性・封止性を実現

温度変化による劣化が少ない

成形と接合が同時に行われ、作業時間を短縮

 

適している用途

高い防水性が必要なモーター部品

気密性を要するコネクタ

インバーターケース

電子部品ケース

 

品質管理のポイント

インサート接合の品質管理は、製品の信頼性を確保する上で重要な工程です。まず、金属表面の処理状態を光学顕微鏡や表面粗さ計で確認します。表面処理が不均一だと密着不良の原因となるため、処理面の状態を入念にチェックします。

次に、X線CT装置による内部観察や断面観察で、樹脂の充填状態を確認します。樹脂が金属表面の微細な凹凸に十分浸透しているか、気泡などの欠陥がないかを検査し、必要に応じて成形条件を調整します。

製品の気密性は、圧縮空気による漏れ試験や水没による気泡確認など、用途に応じた方法で検査を実施。さらに、引張試験や温度サイクル試験により接合強度と耐久性を評価します。これらの品質管理により、高品質な製品の安定供給を実現しています。

 

デメリットと注意点

主なデメリット

レーザー装置などの専用設備が必要で初期投資が高額

表面処理工程が追加されるため、1個あたりの製造時間が増加

技術者の専門的なスキルが必要

 

まとめ

専用金型を使用した射出成形技術により金属と樹脂を一体化させ、強度や耐久性の高い部品づくりを実現するインサート成形ですが、封止性・気密性の確保が課題でした。

それを解消すべく、インサート成形をバージョンアップさせたのがインサート接合です。レーザー照射等で表面を粗面化し密着性を高めることで、高度な気密性・封止性をもった製品が製造できるようになりました。

製品の要求仕様や生産量、コスト要件などを総合的に判断し、最適な工法を選択することが重要です。特に高い気密性や信頼性が求められる製品については、インサート接合の採用を検討することをお勧めします。